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養育費

養育費の減額が認められる場合とは?支払わないとどうなる?

公開日:2018.08.21  最終更新日:2022.05.17

この記事の目次

養育費の減額請求とは、いったん取り決められた養育費について、その後の事情の変化により減額を求めることをいいます。養育費は、権利者(養育費をもらう側)と義務者(養育費を支払う側)の収入、子の数・年齢、その他の事情により決められることが多いかと思います。この記事では、「養育費の減額請求とは?養育費を減額してもらうことはできるのか?」といったご相談について、弁護士がくわしく解説いたします。

養育費の減額請求が認められるケースとは

養育費の減額は、養育費の取り決め時の事情が、その後変動した場合に認められる可能性があります。

そもそも養育費の請求は、親族間の扶養義務(民法877条)にもとづく請求と解されています。

特に親子間の扶養義務については、義務者と同一水準の生活を送ることができる程度の扶養を要すると考えられています(生活保持義務)。理念上は、義務者の生活水準を落としてでも子どもを扶養しなければなりません。

このような養育費の性質から、養育費の減額が請求できるのは、義務者の生活水準が下がるような事情が生じた場合であるといえるでしょう。

一般的には、以下のような事情が生じた場合に養育費の減額が認められることが多いです。

1. 養育費を支払う側の収入が大幅に減少した

養育費を支払う側(義務者)の勤務先の経営悪化や役職の変動などにより収入が大幅に減った場合、養育費算定の前提に事情の変更があったとして、養育費の減額が認められる可能性があります。

ただし、従前の収入を得ようと思えばできるにもかかわらず、意図的に収入を減少させたような場合には、養育費の減額が認められない可能性が高くなります。

2. 養育費をもらう側の収入が大幅に増加した

養育費をもらう側(権利者)の収入が大幅に増加すればそのぶん子の生活水準が上がり、義務者と同一水準の生活をするための養育費は少なくて済むはずですので、減額請求が可能であると考えられます。

3. 養育費を支払う側に扶養家族が増えた

養育費を支払う側(義務者)が再婚して、再婚相手との間に子が生まれるなどして扶養家族が増えた場合には、そちらに回すべき費用が増加する分、義務者自身の生活水準が下がることが考えられるため、養育費減額請求が可能となるでしょう。

再婚相手や生まれた子につき、養育費算定の前提となる被扶養者に変動があったと考えられるためです。これは、再婚相手の子(連れ子)と養子縁組をした場合でも同様です。

一方、扶養にも優先度があります。扶養家族が増えたとしても、たとえば義務者の親が扶養家族となった場合は、親に対する扶養義務は子に対するものより優先順位が劣るため、養育費の減額は認められない可能性が高いです。

4. 養育費をもらう側の再婚相手が子と養子縁組をした

養育費をもらう側(権利者)が再婚し、再婚相手が子と養子縁組をした場合には、養育費の減額が認められる可能性が高くなります。権利者の再婚相手も子に対する扶養義務を負いますので、扶養義務者が増えるためです。

離婚した妻が再婚した場合は減額請求できる?

(親権を持つ)離婚した妻が再婚したからと言って、直ちに父母としての養育費の負担義務がなくなるわけではありません。

ただ、審判例の中には、離婚した夫婦双方がそれぞれ再婚し、子らが母親の再婚相手と養子縁組をしたことを考慮し、子の実父の負担する養育費等の減額を認めた審判例はあります(東京家裁平成2年3月6日審判)

この審判例では、「双方の再婚、未成年者らとの各養子縁組等の事実は、養育費に係る合意が交わされた当時、現実問題として当事者双方共予想しあるいは前提とし得なかったことである」などとして養育費の負担額の変更を認めました。

実父の養育費負担がなくなるわけではない

このように、場合によっては養育費の減額を申し立てることができますし、それが当事者間の均衡上妥当と考えられる場合があるでしょう。

もっとも、同審判例においても、実父の負担額を0と判断したわけではありません。養父母に養子の生活保持義務が認められる一方、実の父母として、実子の養育に一定の責任を持ち続けると考えられます。

養育費の減額請求ができないケース

上記のような養育費の性質上、次のような理由では減額請求はできないと考えられます。

1. 面会交流を拒まれた場合

感情論としては子に会う代わりに養育費を渡すという条件は理解できなくもないですが、子どもに義務者と同じ水準の生活を送らせる義務があることと、面会交流の権利はまったく別問題ですから、面会交流ができないからといって養育費減額請求が認められるものではありません

2. 義務者の支出が増加した場合

例えば、住宅や自動車のローンが増えたといった事情で、養育費の支払いが難しくなることが考えられますが、これらは義務者の生活水準が下がったと評価される事情とはいえないと考えられますので、減額請求は認められない可能性が高いでしょう。

3. 最初に定めた養育費が相場よりも高い場合

程度にもよりますが、義務者が支払い可能と考えて合意した養育費については、事後的な事情の変化がないため、後になって相場よりも高いことに気づいたからという理由のみで減額請求が認められることにはならないでしょう。

養育費の減額を求める方法

養育費の減額を求める場合、まずは協議により減額を求めることになります。

協議がまとまらない場合には、養育費減額調停・審判を申し立てることとなります。

 

養育費を支払わないとどうなる?罰則はある?

養育費の取り決めをしているのに養育費を払わない事例というのは非常に多く、厚生労働省による平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によれば、養育費の取り決めをしている母子世帯は42.8%、「現在も養育費を受けている」世帯は24.3%にとどまります。

養育費を支払わない場合にどうなるかについては、養育費の取り決め方によって変わってきます。

1. 口頭または公正証書以外の離婚協議書等の合意書による場合

養育費が不払いとなった場合、権利者(養育費をもらう側)としては債務名義を求めることになるでしょう。

具体的には、公正証書での養育費の取り決めを求めたり、養育費分担調停・審判や裁判を提起したりすることが考えられます。

そして、公正証書や、調停調書・審判書、判決文の取得を目指すことになるでしょう。義務者の側(養育費を支払う側)からすると、これらへ対応を余儀なくされることになります。

2. 公正証書で合意書を作成した場合や、調停・審判により取り決めをしている場合

公正証書や裁判で具体的金額の支払いが定められている場合、それでも養育費を支払わなければ、権利者は債務名義(公正証書、調停調書など)にもとづき義務者の財産を差し押さえることが考えられます。

このとき、差押えの対象としやすいものとしては給与債権が挙げられます。養育費は毎月発生するものですので、毎月発生する給与を差し押さえるのが確実かつ一回的な解決が図りやすいからです。

令和2年4月には民事執行法が改正され、強制執行のための財産開示手続が拡充されました。そのため、財産や勤務先の隠匿は困難になってきています。

養育費を支払わないと罰則はある?

養育費請求権はあくまで民事上の請求権ですので、これの不履行で刑事罰が科されることはありません

もっとも上述の財産開示手続において、義務者が裁判所に出頭しなかったり、虚偽の事実を陳述したりした場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される場合があります(民事執行法213条1項)

養育費が支払えないのを理由に子供との面会交流を拒否されたら

養育費が支払えなくなり、子供との面会交流を拒否されてしまったケースについて考えてみましょう。

ご相談内容

別れた妻との間に10歳の子供がいます。子供は元妻と共に生活をしており、私は養育費の支払いを続けてきました。しかし勤めていた会社が倒産してしまい、養育費を支払うことができなくなりました。

そうしたところ、元妻より「養育費を支払わないのであれば、子供とも会わせない」と言われました。これまでは月に1度、子供に会ってきましたが、もう子供に会えないのでしょうか?

養育費の支払いを面会交流の条件にできる?

「養育費を支払わないから子供を会わせない」という元妻の言い分は、感情論としては理解できないものではありませんが、法的にはどうでしょうか?

元妻の言い分は、養育費の支払いを、元夫と子供の面会交流の条件とするものですが、このような言い分を直接認める法律はありません。

養育費の支払いは子に関する経済的な責任の所在に関する問題であり、面会交流は子との精神的交流に関する問題であって、それぞれ性質が異なります。

「養育費の支払いは養育費の支払い」「面会交流は面会交流」と切り離して考えるのが法の原則的な立場といえます。よって、元妻の言い分は、法的にはなかなか通用しにくいでしょう。

だからといって、元夫が元妻に内緒で子供を連れ去ってしまうのは問題です。場合によっては未成年者略取罪(いわゆる誘拐)で処罰されることがありえますし、なにより元夫と元妻との関係が極めて悪化し、以降の面会交流の実現が困難となります。

ではどうやって面会交流を実現するのか…この点は色々なテクニックがあると思いますので、養育費と面会交流の問題でお悩みの方はぜひ弁護士にご相談ください。

養育費の減額については弁護士にご相談ください

養育費の金額については、主に、収入状況家族構成子の状況によって変動しうると考えるべきでしょう。

個別的な事情によっても減額請求の可否は変わってくると思いますので、まずは減額を求めるにあたり、ご自身でどのような事情があるのかを整理してみるとよいかと思います。

養育費を減額したい方や、養育費の減額請求をされてお困りの方は、お一人で悩まずに、まずは当事務所の弁護士へご相談ください。

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