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卒婚のメリットとデメリットとは?

公開日:2020.05.25  最終更新日:2021.11.30

この記事の目次

この記事では、卒婚のメリットとデメリットについて弁護士が解説いたします。

卒婚のメリットとは?

卒婚では、離婚しないことによる様々なメリットを享受できますし、家庭内別居や別居とは異なる様々なメリットを享受することができます。

1 身分関係、居住関係、法律関係のメリット

戸籍上、他人とならない

離婚をしないため、戸籍の記載の変更等が生じることはありません。

復縁可能性がある

離婚した場合に復縁する可能性はほとんどありません。しかし、卒婚後には夫婦の新しい生活スタイルが確立し、冷静で落ち着いた状態で関わることで、相互に思いやりや配慮の気持ちが芽生え、そのような言動や行動が増えることで、復縁する可能性も高まります。

夫婦関係がぎくしゃくしてしまったときには、どうしても他責的な思考に陥り、配偶者を分からせたい、誤解を解かせたいと、ご自身の態度や発言もエスカレートして、ますます離婚に向けて拍車がかかることが多くなりがちです。しかし、そこで落ち着いて話し合い、離婚ではなくまずは卒婚という選択をすることで、実は将来的な復縁可能性もひらけることは、卒婚を選択する大きなメリットの1つと言ってよいでしょう。

住まいを失わない可能性が高い

同居卒婚をすればもちろんですが、別居卒婚でも、貴方がそれまでの住まいに暮らすという取り決めができれば、貴方自身の住まいを失わないで済みます。

別居と比べると法律関係が明確

また卒婚は、法律関係があいまいな(家庭内)別居と比べれば、夫婦間の収支や財産関係、子供との関わり合い方等、柔軟な取り決めができますので、法律関係が明確化するというメリットもあります。

2 資産、収入関係のメリット

共有財産を失わないで済む

離婚する場合、夫婦の共有財産は、原則財産分与する必要があります。
しかし、卒婚は離婚ではありませんので、配偶者名義の不動産その他の資産について、卒婚契約上の取り決め内容次第で、今後もご自身が有効活用する余地が残されます。

生活費が失われない

収入が配偶者よりも少ない方の場合、経済的には配偶者に養ってもらっていることが多いと思います。離婚すると養ってもらえなくなりますが、卒婚契約を取り交わすことで、今後も経済的に養ってもらえる可能性が高まります。

永年(家庭内)別居生活をしていても、離婚に踏み切れない理由の1つとして、経済的自立が困難という実情がありますが、卒婚で生活費の取り決めができれば、今後も経済的な安定は維持されますので、この点は卒婚の大きなメリットの1つです。

配偶者の遺産を相続できる

離婚しない以上、将来配偶者が先に死亡した場合には、配偶者の遺産を相続することができますし、遺族年金も受給できます。

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3 コスト面のメリット

手間やコストがかからない

離婚を選択した場合、戸籍関係、住居関係、財産関係、扶養関係など、身分関係の変動に伴う様々な影響が出てきますので、それら1つ1つに対処しなければなりません。離婚に向けた話し合いだけでも、時間・手間とともにコストもかかるのに、離婚後も様々な負担に煩わされます。それに比べますと、卒婚の場合、卒婚契約内容にもよりますが、相対的にこれら負担がかかりにくいのが一般的です。

4 精神面のメリット

精神的負担が軽い

離婚の場合、多くのご夫婦で、相手方に対する愛情の喪失だけでなく、無関心や憎しみ、敵対心といった負の感情を抱いて、夫婦関係の終わりを迎えてしまうことが多いものです。

しかし、卒婚の場合は、同居卒婚であれ別居卒婚であれ、相互に自立した大人の関係を取決めして次のステージへと進めますので、適度な関心とそれなりの情愛を抱いて、老後を迎えられる可能性が高まります。

また、別居との対比においても、以下のメリットを享受できます。別居の場合、将来離婚に進んでいくのか、頑張って復縁可能性を模索するのかなど、中途半端な状態が続きます。これに対し、一旦「卒婚」という自立した関係を取決めできれば、ご夫婦それぞれにとっての精神的な安定にはつながりやすく、この点でも卒婚はメリットが大きいものです。

世間体を保てる

離婚の場合、世間体が悪いというのも、なかなか離婚に踏み切れない夫婦の悩みとしてよく聞く話です。しかし、卒婚の場合は、離婚しませんし、かつ卒婚状態であることを対外的に公表する必要もありませんので、世間体を保つことができます。

近しい親族への精神的負担が軽い

離婚すること自体、子供たちや、結婚を喜んでくれた親・親せきを悲しませることが多いものです。しかし、卒婚という選択ができれば、離婚との対比において、子供たちや親・親せきを悲しませる度合いは相当程度薄めることができます。

卒婚のデメリットとは?

卒婚のメリットを見ますと、卒婚はいいことだらけのような気もしてきますが、以下に述べるようにいくつかのデメリットもあります。特に離婚をすることにより得られるメリットが享受できないという視点は大事です。

したがって、卒婚を検討する場合は、メリットだけではなく、以下のデメリットについてもじっくり考え、ご夫婦としてのあるべき卒婚の姿を取決めしていただきたいところです。

1 身分関係、法律関係のデメリット

他人にはなれない

戸籍上他人にはなりませんので、「とにかくあらゆる縁を切りたい」と考えている方の場合、「卒婚」という選択肢は採用できないことになるでしょう。

また、卒婚契約を結んだとしても、その後、お互いが自立した存在として安定的に生活できる保障はなく、卒婚生活すらもギクシャクしてどうしても離婚したいとなった場合に、一から離婚に向けた交渉などの対応をし始めなければなりません。その際、卒婚契約の存在が、離婚に向けた活動の足かせとなるリスクもあるでしょう。

離婚と比べると、法律関係が曖昧

卒婚契約時に、いかなる内容で取り決めするかにもよるのですが、卒婚後に夫婦間において起こり得るあらゆる事態を網羅的に予測して、卒婚契約書に盛り込むことは不可能です。そのため、卒婚契約時に想定していなかった事態が発生した場合に、卒婚契約の解釈や履行、解消を巡って、夫婦間で新たなトラブルの原因となる可能性があります。

卒婚契約が取り消される可能性がある

夫婦間の契約は、いつでも取消できるという条文があります(民法754条)

これは、卒婚契約にも原則として適用されますので、この条文を意識した契約書の作り込みをしない限り、卒婚契約といっても法的には無意味な契約となる可能性があります。

そのため、卒婚契約においては、民法754条の適用を除外する旨の合意条項を入れることは不可欠なのですが、これで大丈夫かどうかは、判例もない分野なので、分からないというのが現時点での弁護士としての考えです。但し、民法754条自体、親族法の改正論議の中で削除すべきとの意見の大きい条文なので、弁護士としては、適用除外条項によって、卒婚契約は取り消されない契約となると解釈できるのではないかと考えています。

2 資産収入関係のデメリット

生活費を支払い続けなければならない

収入が配偶者よりも高い方の場合、配偶者を自身の経済力をもって養っていることが多いと思いますが、離婚しない以上は原則として、扶養義務が今後も続くことになります。

この点は、卒婚契約時の取り決め方によっては、大したデメリットとはならない可能性もあります。

財産関係の取り決めをしても無効となる可能性がある

民法では、「夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。」との条文があり(民法755条)、「次款」として、民法760条~762条までに、法定財産制が規定されています。

また、婚前契約が締結されたことを前提として、「夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。」(民法758条1項)という条文もあります。

これらの規定から、結婚後は当事者間の契約をもって、財産関係の取り決めをすることはできないとの解釈が導かれ、卒婚契約の一内容として財産関係の取り決めをしても、当該取り決めは法定財産制や民法758条1項に反する取り決めとして、無効となる可能性がある訳です。

この点は、前例も見当たらず、弁護士としても断定的なことは言えないのですが、民法752条の夫婦間の協力義務を活用することなどにより、協力契約公正証書、協力調停、協力審判という形式を取ることにより、クリアできるのではないかと考えています。いずれにせよ、非常に難しい法律的な話ですので、ここから先は、この問題を研究している当事務所弁護士への法律相談を、おすすめいたします。

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3 その他のデメリット

新しい恋人は作れない?

離婚ではなく卒婚をした場合のデメリットの1つとして考えられることが、新しい恋人・パートナーを作りにくいということはあるかと思います。

夫婦は互いに別の人と恋愛感情を含んだ交際をしない義務(いわゆる、守操義務)を負っています。離婚をすれば、この守操義務は法的に解除され、誰と交際するのも自由になる訳ですが、卒婚の場合にこの義務が解消されるのか、明確な取り決めがない場合は、後にトラブルの種となりかねません。

夫婦間の卒婚契約として、卒婚後の交際の自由を明記することで、夫婦間の守操義務が解除されるとも考えられますが、夫婦間の契約はいつでも取り消せるという条文(民法754条)の存在も気になりますし、婚姻を続けながら新しい恋人との交際の自由を定めた場合にその効力が有効なのか(民法の婚姻制度の趣旨、善良なる風俗に反する取り決めとして、公序良俗に違反し無効となる(民法90条)のか)は、前例もなく、何とも言えません。
かかるリスクがあり得るという前提で、卒婚契約においていかなる取り決めをするのが妥当か、専門家と相談しながら進めていくことが必要でしょう。

第三者からの理解を得られにくい場合がある

卒婚という概念が広く日本社会で浸透している訳ではありませんので、人によっては、卒婚という夫婦のあり方に違和感や不快感を抱く人も出てくるかもしれません。そのような人と夫婦に関する話題となった場合に、話が噛み合わないなどの弊害があるかもしれません。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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