離婚コラム
弁護士に依頼をせずに離婚調停ができますか?
公開日:2021.02.03
最終更新日:2021.02.03
離婚調停(夫婦関係調整調停)を弁護士(代理人)に依頼せずに行うことは可能ですが,様々なデメリットがあります。以下でくわしく解説いたします。
1.統計データ上2件に1件の調停で弁護士が関与
離婚調停における弁護士(代理人)の関与する割合は長らく20%程度に留まっていましたが,近年増加傾向にあり,直近では概ね50%となっています(司法統計参照)。
つまり,2件に1件の調停で弁護士が関与していることになります。
なお,離婚訴訟(人事訴訟)での弁護士関与率は98%程度と,ほぼすべての事件で弁護士が関与しています。
こうした離婚調停の現状をまずは把握しておく必要があるでしょう。
2.弁護士に依頼しないことのデメリット
①調停の流れがわからない
多くの方にとって,離婚調停は初めての経験となるかと思います。
ネットや書籍で情報は得られても,実際に当事者として体験するのとは勝手が違いますし,地域や時期によっても運用が異なります。
弁護士に依頼をせずご自身で対応されると,調停の流れが分からず,なぜこういう進め方になっているのか,今何を話し合っているのかが把握できず,最終的に不本意な結果で調停が終わってしまうかもしれません。
多くの弁護士は知識と経験として,常に最新の情報を把握しています。特に地方都市になると,特定の裁判官,特定の調停委員の調停の進め方なども把握できることもあります。
「ここの裁判所ではこういう流れで進行している」とか,「最近は,こういう流れで協議を進めている」など,調停に先立ち,あるいは調停の最中にも様々なアドバイスができ,依頼者様に安心と予測可能性を与えることができるでしょう。
②調停委員の説明が納得できない/理解できない
調停委員は市民感覚を反映させるために一般人(中には法律の専門職の方もいます)から裁判所が選任しています。したがって,必ずしも法律に詳しいわけではなく,法的に妥当な結論が約束されているわけでもありません。
調停委員は両当事者の言い分を聞いた上で,双方の合意点を探ることを目指しますので,ともすれば声の大きい(主張が強い)方に譲歩する形で話が進んでしまいがちです。
また,調停委員は必ずしも法的根拠に基づいた説明をするわけではなく,場合によっては相手方の言い分を伝えるだけといった,根拠に乏しい案を示したりすることもあります。
弁護士に依頼されないまま,ご自身で対応されると,そうした調停委員の説明や案が果たして合理的なのかどうかその場で判断できず,気がつけば相手方の言い分ばかりが認められる形での調停が成立しかねません。
弁護士に依頼することで,ご自身の言い分を,根拠をもって調停委員に説明することができますし,相手方の言い分についても弁護士からの適切なアドバイスを受けた上で妥当性を判断できるでしょう。
③主張が伝わらない
ご自身で調停の対応を始めてから,弁護士に相談される方は多くいらっしゃいます。多くの場合,「調停委員に自身の主張を伝えているがまったく聞いてもらえない」さらには,「相手の言い分ばかりを聞き入れている」といった内容のご相談です。
調停での主張を裏付ける根拠資料として調停委員と裁判所が期待しているものと,ご自身で準備されているものに食い違いが生じていたり,そもそも,何を根拠としていいのか分からなかったりすることが多くあります。
弁護士に依頼されることで,ご自身の主張を裏付ける適切な根拠資料を提出でき,調停を有利に進めることができるでしょう。
④両当事者の力の格差が生じる
冒頭の統計データでも明らかなとおり,今や2件に1件の調停で弁護士が関与しています。
相手方に弁護士がついている場合,相手方には様々な情報や主張を裏付ける根拠が揃っていることでしょう。こうした中,弁護士に依頼をせずにご自身で調停を進めると,知識・情報の面で不利な立場に陥り,不本意な結果で調停が終わってしまいかねません。
また,仮に離婚調停が不成立となった場合,さらに離婚訴訟(裁判)が提起されることも考えられますが,離婚訴訟においては調停以上に主張と主張を裏付ける証拠が重要ですし,訴訟に先立つ離婚調停で出された資料や報告書が訴訟においても重要な意味を持つこともあります。
たとえば,調停中に作成された調査官による子の監護に関する調査報告書などは,離婚訴訟における親権者を定める判断に重大な影響を及ぼします。
弁護士に調停対応を依頼をされれば,相手方と対等あるいは相手方より有利な状態で調停委員と話し合いができますし,将来的な訴訟も見越した活動も可能となります。
さいごに
弁護士に依頼をしないことのデメリットをお伝えしてきましたが,依頼をしない最大の理由としては「弁護士費用がかかるから」ということが多いかと思います。
費用対効果の面は,ご相談時にしっかりとご説明いたしますので,まずは当事務所にご相談いただき,ご依頼を検討されてはいかがでしょうか。