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経営者(社長)の離婚|注意点とは|弁護士が解説

公開日:2022.09.02 

この記事の目次

会社の経営者(社長など)が離婚する場合、特有の問題が起こることがあります。経営者には一般的に高所得の人が多く、財産の種類も広範囲に渡るケースがあるためです。そのため財産分与などについて問題となりえます。会社(法人)の経営者が離婚する際の注意点について、福岡・佐賀で離婚問題に精通する弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

経営者の離婚|注意点とは|弁護士が解説

経営者(社長)の財産分与

財産分与とは

財産分与とは、離婚をする際に夫婦の共有財産を清算し、持っている資産の少ない方が、多い方から一定の財産を受け取る制度です。

夫婦が共同生活をするなかで形成した財産の公平な分配が主な目的ですが(清算的財産分与)、下記のような要素が入る場合もあります。

  • 離婚後の生活保障(扶養的財産分与
  • 離婚の原因を作ったことへの損害賠償(慰謝料的財産分与

夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても、実際には夫婦の協力によって形成されたものであれば、財産分与の対象となります。

例えば婚姻中に夫の収入でマンションを購入し、夫の単独名義になっている場合であっても、妻が家事などを分担して夫を支えていれば、そのマンションは実質的には夫婦の共有財産といえると考えられます。

財産分与の割合は、原則として、財産形成に対する寄与度によって決まります。特段の事情がない限り、一般的には「2分の1」ルールが適用され、資産を半々にして夫婦で分けます。

離婚の際に当事者間での話し合いができなかったり、話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。家庭裁判所の審判でも、夫婦が共働きをしているケース、夫婦の一方が専業主夫/主婦であるケースのいずれでも、夫婦の財産を2分の1ずつに分けるように命じられることが多いです。

一方が多額の個人的な預金を所有していても、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産であれば、「2分の1」の割合で分与することになります。

会社経営者の財産分与は2分の1にならないケースも

ただし、会社経営者の場合は「2分の1」にならないケースもあります。

「経営者個人の才覚や能力などにより、対象財産を築いた」という点で、財産形成への寄与度が高い場合など、2分の1の割合で分与することが公平性を欠くような場合には、6対4や7対3といった割合で財産分与がされることがあります。

「個人の才覚や能力」とは、医師や弁護士など特別な資格が必要な場合や、創業社長など秀でた才覚があると一般的に認められる場合のことを指します。

法人経営者や役員が持っている法人の株式は、財産分与の対象になります。非上場の場合、税理士や公認会計士等の専門家の協力の下、株の価値を算出して財産分与対象額を決めます。

また経営者の資産は、役員報酬や個人名義での不動産契約・賃貸など、節税対策と絡んで入り組んだ契約が結ばれ、法人と個人の資産が混在しているケースがありますが、法人の財産は原則として財産分与の対象にはなりません。

なお、財産分与は離婚をしてから請求することもできますが、離婚から2年が過ぎると家庭裁判所への申し立てはできなくなりますので、注意が必要です。

経営者(社長)の養育費・婚姻費用|算定方法は?

経営者(社長)の養育費・婚姻費用|算定方法は?

養育費と婚姻費用は、収入に応じて高くなる傾向がありますが、「本人の才覚にもとづいて高収入を得ている場合」は、一般的な相場よりも低く認定されるケースがあります。

当事者間で合意をする場合、双方がその金額で合意するのであれば、その金額がいくらとなっても差し支えありません。

もっとも弁護士や裁判所が関わる場合、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にしますので、当事者間で話し合いをする場合にも参考にするのがよいかと思います。

養育費・婚姻費用の算定について|裁判所

「養育費・婚姻費用算定表」では、養育費を支払う人・受け取る人の年収が、給与所得者の場合は2,000万円までしか想定されていません。経営者の収入がそれ以上の金額となる場合、婚姻費用や養育費の金額をいくらにするか、明確な目安がないのです。

そこで、年収が2000万円を超える場合の養育費や婚姻費用の算定においては、2つの考え方があります。

まず、支払う側の年収が2000万円を超える場合でも、算定表の上限で頭打ちとする考え方です。生活費や子どもの養育費に、算定表の上限を超える額はかからない(収入が増えたからといって無制限に上がるものではない)という考え方です。

一方で、年収の金額に応じて養育費も増加するという考え方があります。この場合の金額の算定においては、①夫婦の基礎収入を計算し、②子どもの生活費を計算したうえで、養育費の額を定めるといった方法がとられています。

高額な所得を得ている方は、標準的な算定方法から外れ、個別具体的な事情を踏まえてた上で婚姻費用・養育費の算定を行うことになる場合があります。また、明確な基準がないため争いにもなりやすいところです。そのため、あらかじめ弁護士に相談いただくことを強くお勧めします

経営者(社長)の離婚慰謝料

経営者(社長)の離婚慰謝料

離婚の慰謝料とは、不倫(不貞)や暴力(DV)など、離婚の原因を作った責任がある配偶者(有責配偶者)に対して、その精神的苦痛を受けた相手である配偶者が請求することができる慰謝料です。

慰謝料の金額は、離婚の原因や婚姻期間などを考慮して判断されます。

会社経営者(社長)が有責配偶者の場合、収入や資産に応じて離婚慰謝料の金額も増えるのでしょうか。

この点、離婚裁判においては、収入や資産が多い場合に慰謝料額がやや高くなる傾向があるようですが、相場としては50万円~300万円の範囲にとどまることが多く、高額な場合でも500万円を超えるケースはほとんどありません。

経営者(社長)の離婚と親権問題

離婚を考えている経営者のなかには「自分の配偶者は経済力がないので、親権者にはなれないだろう」と考える人もいるかもしれませんが、子の親権を定める際に、経済力の違いは大きな問題とはなりません。

子育てに最低限必要な経済性は求められますが、収入が少ないほうが親権者になる場合、収入が多い配偶者から養育費をもらえるため、現時点で収入が少ないことが親権者になれない理由とはなりません。

親権者を父母のどちらにするかは、協議、調停、裁判の手続きによって決まります。夫婦間の協議で決めることができない場合には、子の福祉にかなうのはどちらかという観点から、裁判所が父母のいずれが親権者にふさわしいかを審理・判断します。

その際に考慮される事情としては、次のようなものがあります。

  • 親の性質(年齢、性別、収入、性格、生活状況など)
  • 子供の年齡や性別、兄弟の有無
  • 子供の現在の生活環境
  • これまでの監護状況
  • 子育てに割ける時間、監護への意欲

子が幼いうちは、直接子の世話をしてきた方を親権者とすることが、より子の福祉にかなうと考えられています。そのため、母親が主に子育てをしてきたような場合は、母親が親権者となる可能性が高いでしょう。

経営者が多忙で、もう一方の配偶者がほとんど育児を担っていたような場合は、親権をめぐって争いになると、経営者側は不利になる可能性もあります。

また、子が中学生くらいと大きく、自分の意見を言えるような場合には、子の意見が尊重される傾向があります。

経営者(社長)の年金分割

経営者(社長)の年金分割

会社経営者と離婚する場合、年金分割はできるのでしょうか。

日本の公的年金は、主に「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2種類があり、年金分割とは、「厚生年金」について婚姻期間中に夫婦が納付した年金を分割する制度(正確には、婚姻期間中の年金記録を分割する制度)です。

会社から報酬を得ている経営者の場合は、「厚生年金」に加入していると思われますので、離婚時に年金分割をすることができます。

なお、妻が夫の経営する会社から役員報酬を得ている場合は、年金分割を行うにあたり、妻の標準報酬月額や標準賞与額も考慮されることになります。

このように、配偶者が会社経営者の場合でも、年金分割をすることができます。

経営者の離婚については弁護士にご相談ください

会社経営者の方の離婚問題においては、財産分与や養育費などについて、一般の方とは異なる考え方があります。

自身の才覚や資格で築いてきた財産については、その正当性を調停官や裁判官に認めてもらうことも重要になります。

考慮すべき点も多く、ご自身で判断することが難しいため、専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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