離婚コラム
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離婚協議書とは|公正証書にすべき?|作成方法やタイミング
公開日:2020.08.11 最終更新日:2022.08.08
離婚協議書とは、離婚に伴う諸条件に関する合意内容を記載した書面をいいます。
単に離婚をするということだけであれば、離婚届を提出すれば足ります。しかし、離婚に伴い、養育費や財産分与、面会交流の条件など、様々な取り決めをすることが一般的です。こうした離婚に伴う諸条件に関して、後で揉めることがないよう文書という形で残しておくために、離婚協議書を作成することがあります。いわば、離婚に関する契約書のようなものです。
離婚協議書に記載する内容
離婚協議書に記載すべき内容は、離婚に合意したこと、親権者の指定、面会交流の条件、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割など、離婚によって変動を生じる身分関係や財産関係についての合意事項を記載するとよいでしょう。
離婚協議書を作成するタイミング
離婚協議書は、「こういう内容でお互い納得して離婚する」という意思確認の書面ですので、離婚届の提出前に作成するのがよいでしょう。
また、離婚意思は離婚届の届出時に必要とされます。つまり、離婚協議書で「離婚する」という意思が示されていても、離婚届を出す前に翻意してしまえば、離婚できない可能性があります(その点で、契約書とは性格が異なります)。そのため、離婚協議書作成後は速やかに離婚届を提出すべきでしょう。
離婚協議書の作成方法
離婚協議書の作成方法は、公正証書による方法と、当事者間で作成する方法があります。
公正証書で作成する場合、強制執行手続が容易であるなどのメリットがあります。
一方、作成費用や作成のために公証人と打ち合わせを行ったり、両当事者が公証役場に出向いたりするなどの労力がかかるというデメリットがあります。
離婚協議書は公正証書にすべき?
離婚協議書は、必ずしも公正証書にする必要はありませんが、内容によっては公正証書により作成するべき場合があります。以下では、離婚協議書を公正証書で作成するメリットについて、弁護士が解説いたします。
まず、「離婚協議書」とは、夫婦が離婚および離婚に伴う諸条件につき協議し、合意した内容を記した書面です。離婚協議書では、離婚すること、未成年の子の親権者、慰謝料、財産分与、養育費、面会交流の条件、年金分割等について取り決めることが多いです。
「公正証書」とは、公証人が公証人法に基づき作成する公文書です。
公正証書のメリット1:執行力がある
公正証書には、私文書である離婚協議書その他契約書とは異なり、執行力があることが最大の特徴です。
執行力とは、「判決により確定した権利を国家権力が強制的に実現することができる」という効力です。具体的には、差押えをイメージいただくとよいかと思います。公正証書には、確定判決と同一の効力が認められるため、公正証書には執行力が付与されます。
離婚協議書、公正証書のいずれを作成しても、離婚を行うことはできます。離婚協議書を公正証書で作成しなかったからといって、効力がないわけではありません。しかし、離婚協議書で定めた義務の履行がない場合、すぐに強制執行することはできず、裁判手続を経なければなりません。
離婚協議書を公正証書で作成すれば、裁判手続を経ずに強制執行に移ることができるため、権利者の権利実現が容易になります。
公正証書のこうした特徴から、離婚協議書の内容として、義務が果たされなかった場合に強制執行をする必要性がどれくらい高いかによって、公正証書によるべきか否かを決めることになるでしょう。
公正証書の方がよいケース:養育費の請求を行う場合
養育費の請求を行う立場の場合は、公正証書を作成する方がよいでしょう。
養育費のように、将来にわたり長期間の給付を予定している権利を定める場合には、将来義務者が支払いを拒むリスクが否定できません。支払がなされなければ強制執行により実現する必要があるため、公正証書により作成すべきといえます。
養育費支払いの規定を「離婚協議書」の中で定めていた場合、相手方が支払いを行わない場合に、直ちに給与差押えなどの強制執行手続をとることができません。そのため、養育費の支払いを求める調停を申し立てるなどの対応が必要となります。
これに対し、「公正証書」を作成し、強制執行受諾文言(支払いをしなかった場合、強制執行を受けても異議を行わない旨規定するもの)を規定しておけば、相手方が養育費を支払わない場合に直ちに強制執行の手続きをとることができます。
養育費支払いを確実にしてもらい、不払い時にすぐ対応できるようにするためには、公正証書を作成するのがよいと言えます。
公正証書で作成しなくてもよいケース
一方、離婚と親権者を取決めるだけであったり、金銭給付があるにしても離婚と同時に一括で支払うというものであれば、離婚協議書とともに離婚届にも署名押印をしたり、直ちに金銭給付をしてもらうことで足り、公正証書で作成する必要性は低いでしょう。
公正証書のメリット2:証明力がある
離婚協議書を公正証書で作成する意義としては、執行力の他にも、証明力に違いがあるとされています。
私文書である離婚協議書であれば、勘違い(錯誤)や騙された(詐欺)、脅された(強迫)を理由に取消し無効を主張されるリスクがあります。
一方、公正証書は公証人という公的立場の人物が当事者に内容を確認しながら作成するものですので、後に取消しや無効を主張されるリスクは低いといえます。
公正証書のメリット3:約束の遵守につながりやすい
その他にも、公正証書は、夫婦間のみで取り決めた私文書である離婚協議書に比べ、公文書として取り決めたという重みが出ますので、離婚後の約束の遵守につながりやすいという効果も期待できます。
Q. 離婚に合意していても、離婚協議書は作るべきですか?
A. 結論として、離婚協議書は作るべきです。
仮に口頭で離婚条件が決まった場合でも、後日、決まったはずの離婚条件を反故にされるということはよくあります。
この場合、いかに口頭で合意したと主張したところで、離婚協議書のような客観的な書面が存在しない場合、口頭合意の存在を立証することは難しくなります。
このような事態を避けるためにも、必ず離婚協議書を作成し、合意内容を書面に残しておくことが重要です。
合意内容に、継続的に金銭の支払を受ける権利が含まれる場合は、離婚協議書を公正証書で作成することをおすすめします。公正証書を作成しておくことで、仮に相手方が金銭を支払わない場合、強制執行をすることができるようになります。
さいごに
離婚協議書は、離婚後の身分・財産関係に大きな影響を与える合意を示す書面ですので、離婚時には可能な限り作成すべきでしょう。
離婚協議書の作成についてお困りの方、離婚協議書と公正証書どちらを作成すべきかお悩みの方は、当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
【本記事の監修】
弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋(代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。