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専業主婦の別居後の生活費|夫に請求できる?

公開日:2019.05.13  最終更新日:2022.08.02

この記事の目次

収入のない専業主婦の方が、夫と別居したい場合に、まず心配なのが今後の生活費でしょう。別居中の夫に対して、生活費を請求できるのでしょうか。夫婦の問題について累計1300件以上の相談をお受けしてきた福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

夫と別居したい専業主婦…生活費を請求できる?

まずは、次の事例を見てみましょう。

A子さんはB男さんと結婚し、一緒に暮らし始めました。B男さんは自営業者です。結婚の際に話し合い、A子さんは専業主婦になりました。

結婚して5年後、B男さんがある女性と不倫関係にあることが分かりました。A子さんが問い詰めると、B男さんは不倫を認めました。「すまなかった」と謝り、女性との付き合いを絶ちました。

A子さんは「いまは離婚までは考えていないが、夫が本当に反省しているのか信じられないので、しばらく別居したい」と話します。とはいえ、A子さんは収入がなく、別居後の生活が成り立つか不安です。別居後はB男さんに生活費を払ってほしいと考えています。

B男さんは「反省して不倫を清算したのに、なぜ出ていくのか分からない」と、別居に反対しています。

このような事例でも、A子さんはB男さんに生活費を請求できると考えられます。

B男さんが、A子さんの生活費を負担すべき根拠は何でしょうか。以下で詳しく説明いたします。

夫婦の生活費=婚姻費用の分担義務

夫婦の生活費は、法律では「婚姻費用」と呼ばれます。

民法上では、夫婦は互いに扶助しなければならず(扶助義務 民法752条)、資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担するものとされています(婚姻費用分担義務 民法760条)。

扶助義務は「夫婦間の生活保持義務」とされており、婚姻費用はそれに必要な費用と解されています。

「婚姻費用」には、夫婦の衣食住の費用、教養・娯楽の費用が含まれるとされています。夫婦が別居していても、基本的に、婚姻費用は分担されなければなりません。

婚姻費用について 詳しくはこちら

そのため、A子さんは別居後も、B男さんに生活費を請求することができます。話し合ってもB男さんが支払いを拒めば、家庭裁判所に対し、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てることができます。

不倫した夫が別居に反対…生活費はどうなる?

B男さんによる「別居拒否」は、婚姻費用の分担義務に影響を及ぼすのでしょうか。

夫婦間には同居義務(民法752条)があります。A子さんの別居は「夫婦間の同居義務に違反する行為」として、婚姻費用を減額したり免除したりする理由にならないかが問題となります。

この事例では、まずB男さんに「不貞行為」という夫婦間の守操義務(お互いに不倫や浮気をしない義務)違反があります。そのため、A子さんが別居を強行するのはやむを得ない事情があり、婚姻費用を減額する事由とはならないと考えられます。

別居後の生活費|婚姻費用の算定は?

それでは、A子さんはB男さんに対し、婚姻費用としていくら請求できるのでしょうか。

家庭裁判所では実務上、裁判所が公表している「算定表」を用いて、夫(妻)が負担すべき金額を判断しています。基本的には夫婦双方の年収から算定されますが、個別の事情に基づき、算定表から金額が修正されることもあり得ます。

B男さんは自営業者なので、年収は原則、確定申告書の「課税される所得金額」に基づいて判断されます。
ただし、税法上は控除されているものの、現実には支払われていない金額(青色申告控除など)については、加算して年収を定める必要があります。場合によっては、減価償却費等を加算すべき場合や、その他の経費が適正なのかが問題になる場合もあります。

B男さんの前年の年収は550万円、A子さんは0円で子どもはいないとします。その場合、算定表の表10(婚姻費用・夫婦のみの表)によると、A子さん(権利者)が受け取る金額は「12〜14万円」になります。

A子さんは諸々の事情を踏まえ、受け取るべき生活費を判断する必要があります。婚姻費用の算定について不安がある場合は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

なお、「不倫した側からの生活費の請求はできるのか?」については、以下の記事をご覧ください。

有責配偶者とは | 不倫した側から離婚請求できる?

婚姻費用についてのご相談は桑原法律事務所へ

桑原法律事務所は、創業25年目の総合法律事務所です。福岡・佐賀に3拠点のオフィスを構えています。

離婚や婚姻費用の調停について、弁護士に依頼しない大きな理由は「費用がかかるから」ではないかと思われます。当事務所では、弁護士費用について、ご相談の際にしっかりとご説明いたします。まずはご相談いただいたうえで、依頼するかどうかをご検討いただけます。

依頼者様の思いに寄り添いながら、今後の方針などについて提案させていただきます。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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