離婚コラム
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「新しい養育費・婚姻費用算定表」が発表
公開日:2020.02.25
令和元年12月23日、家庭裁判所裁判官による研究成果として、「新しい養育費・婚姻費用算定表」が発表されました。「従前の算定表」に比べ、概ね支払額が同等又は増額されており、これから養育費や婚姻費用の額を決めようとする監護親にとっては、朗報といえそうです。
では、「新しい算定表」ができたのであれば早速増額請求したい、と思う方も増えそうですが、かかるニーズは認められるのでしょうか。例えば、「従前の算定表」を参考に、「子供1人当たり3万円」と取決めした夫婦において、「新しい算定表」によれば月額4万円が相場となる場合に、「1万円増額せよ」という請求をした場合、どうでしょうか。
この点、当然に増額請求が認められる訳ではありません。増額請求が認められるには、取決め当時とは、いずれかの収支の状況が変わったなど、事情変更が必要です。増額請求が認められやすい事情変更としては、義務者側の収入が大幅にアップしたとか、権利者側の収入が激減したなどの事情変更が必要です。逆に、義務者側の収入が減少していたり、義務者側の扶養親族が増えていたり、権利者側の収入が大幅に増額していたりしますと、「新しい算定表」に基づいて増額請求したつもりが、逆に義務者側から減額請求されかねませんので、慎重な判断が必要です。
また、2022年4月より成人年齢が18歳となりますが、「子が成年に達するまで養育費を支払う」と取決めしていた場合に、養育費の支払の終期が18歳に短縮されることがあるのでしょうか。この点も、ルール変更によって従前の取決めが当然に変更される訳ではないと考えられており、新しい取決めがなされない限りは、現行法の年齢(20歳)が適用されることになります。
養育費に関しては、そもそも離婚時に取決めしない方や、取決めをしたとしても途中から支払われなくなって放置されている方も、多くなっています。
支払われていない養育費は、子を養っていくための必要最低限の経済的基盤ですので、気持ち的に離婚した相手とは二度と関わりたくないという感情論を抜きにして、しっかりと請求し、必要があれば強制執行も行うべきでしょう。
我々法律事務所も、養育費請求や養育費増額請求というニーズに対しては、初期費用を低価格に抑え、成功報酬で調整する柔軟なサービスを行っておりますので、まずはご相談ください。
新基準で婚姻費用・養育費がどのように変わるのか
基礎収入の増加
総収入から税金・社会保険料等の必ず支出する費用を控除し、純粋に生活に充てられる分の収入を指します。
算定の根拠となる統計資料について、新基準で最新の情報が利用されており、基礎収入が高くなる算定されるようになりました。その結果、婚姻費用・養育費の額も高くなります。
- 自営業者:旧基準47%~52% ⇒ 新基準48%~61%
- 給与所得者:旧基準34%~42% ⇒ 新基準38%~54%
生活費指数の上昇と低下
大人の生活費を1とした場合の子どもの生活費を割合で示したものです。0歳から14歳の生活費指数が上昇した一方、15歳から19歳の生活費指数が低下したのには、高校の授業料無償化が影響していると言われています。
- 0歳~14歳:旧基準0.55 ⇒ 新基準0.62
- 15歳~19歳:旧基準0.9 ⇒ 新基準0.85
結論はどうなるのか?
- 基礎収入割合が高くなった
=婚姻費用・養育費の算定の基となる基礎収入額が上昇する - 0歳~14歳までの子の生活費指数が上昇した
=この年代の子の生活費が高まる - 15歳~19歳までの子の生活費指数が低下した
=この年代の子の生活費は若干低下する
従来より、婚姻費用・養育費が1万円~3万円程度上昇することが見込まれます。
過去に取り決めた金額も増えるのか?
算定基準の改定が「事情の変更」には当たらないことが明記されています。そのため、算定基準が上がったことを理由に、既に決まっている婚姻費用・養育費の増額を求めることはできません。
法改正で養育費の支払期間は短くなるのか?
民法等において成人年齢引下げの法改正が予定されていますが、養育費の終期については、法改正の影響を受けない(成人年齢が18歳に引下げられたからといって、養育費の支払いが18歳までになるものではない)ことが明記されています。
さいごに
別居しているが生活費がもらえていない、生活費が足りない、離婚の際に養育費の取り決めをしてない、取り決めた養育費が支払われていない、とお悩みの方は数多くいらっしゃいます。
当事務所では、婚姻費用や養育費のご相談もお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
【本記事の監修】
弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋(代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。