離婚コラム
離婚したくない
円満調停
協力請求
男女問題
へそくり隠し場所 | 不倫の証拠 | 夫・妻に情報開示請求 | 弁護士が解説
公開日:2022.03.15
「夫/妻のへそくりの隠し場所を知りたい」「夫/妻が不倫しているようだ」といった悩みはないでしょうか。配偶者の行動履歴や財産記録などを、民法の「夫婦の協力義務」にもとづいて開示請求する可能性について、夫婦の問題に精通する佐賀・福岡の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。
夫婦間の協力義務とは
夫婦の協力義務は、民法で下記のように定められています。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
この協力義務にもとづいて、夫婦の実情に沿った正当な請求であれば応じる義務があります。不当であれば応じる義務はありません。
「へそくり」の隠し場所を知りたい
「へそくり」の隠し場所を知りたい場合、配偶者名義の財産(預貯金、取引履歴など)の情報開示を相手に請求します。下記のような項目が考えられます。
- 預貯金残高
- 取引履歴
- 本人名義財産
- 預貯金通帳の閲覧
2人で決着できない場合、仲直りしたければ夫婦円満調停、離婚が前提なら離婚調停を申し立てることができます。
裁判所での話し合いを通じて、相手に任意での財産開示を求めます。
調停でも決裂すれば、離婚訴訟で財産分与を申し立てるしかありません。まずは任意に相手側に通帳や証書を開示するよう促します。
相手が拒否、または開示が不十分な場合、裁判所に「調査嘱託」や「文書送付嘱託」を申し立て、預金の存否や残高を直接、金融機関から開示させることができます。
ただし訴訟は離婚が前提です。
単に「妻名義の預金の残高を知りたい」というだけなのに一方が拒否すると、離婚を想定した財産分与請求をするしかないのが現状です。
ギャンブルに浪費しているか知りたい
「夫がギャンブルに多額の出費をしているようだけれど、どこで使っているのか知りたい」といったケースはないでしょうか。
「使途不明金の使い道」に関する情報開示請求として、下記の項目が考えられます。
- 給料・賞与額・支給日など
- 給与明細
- 使途不明金の使い道に関する情報の開示
- 使途不明金の使い道の立証資料の閲覧
- 借金の額や借入先について情報の開示
上記は一般的に、夫婦間でお互いに開示されるべき情報です。ギャンブルでの浪費は夫婦の財産を著しく棄損するような行為で、開示を求められれば原則として開示が必要です。
「教えたくない」ならば、正当な理由を説明できなければならないでしょう。
妻が勝手に妻名義の預金を解約するのを止めさせたい
へそくりではなく「妻が勝手に妻名義の定期預金を解約するかも」「夫が勝手に夫名義の保険を解約するかも」といった悩みもあります。
この場合、いずれも「婚姻後に形成した財産」であれば、通常は「夫婦の共有財産」です。
離婚を考えている場合、名義人である側が勝手に解約しないよう、財産の保全申し立てができます。
申し立てが認められれば、財産分与でもらえるであろう額に相当する財産について、勝手な処分(売却や解約など)ができなくなります。
財産分与請求は離婚した元・夫婦か、離婚を前提にした夫婦の間でしか認められない制度とされています。
離婚を考えていない場合、有効な手段がありません。話し合うしかなく、一方が話し合いに応じなければ問題は解決しません。
当事務所では離婚を前提とせずとも、夫婦間の協力義務にもとづき、財産保全を申し立てできないか考えています。
離婚まで考えていない夫婦の申し立てが認められた前例は調べた限り、ありません。しかしながら認められる可能性はあると考えています。
不倫しているか知りたい
夫婦関係に関して、金銭ではなく「行動」についてのお悩みはないでしょうか。
- 妻が浮気をしているようだが平日の日中、どこで誰と会っているか分からない
- 夫が深夜に帰宅したが、退社してから家までどこで何をしているのか知りたい
- 配偶者がしょっちゅう、通話アプリでやり取りしている相手がだれなのか、どんなやり取りをしているのか知りたい
まずは自分で夫/妻を尾行する、探偵を雇って調査する、といった対策を考えつくかと思います。
弁護士に相談しても「事実関係を確認し、できるだけ証拠を集めてください。尾行やメール・LINEのやり取りを写真撮影してください」とアドバイスされると思います。
尾行や探偵は時間やおカネがかかります。相手がスマートフォンを見せないなど、実現には多くのハードルがあります。
夫婦で争いになれば:調停や審判も
「教えろ」「教えない」で争うようであれば、家庭裁判所での話し合いである「調停」や、家庭裁判所の裁判官が判断する「審判(判決のようなもの)」の対象となります。一般的には先に協力調停を開き、妥協点が見いだせない場合、審判手続に移行します。
家事事件手続法には下記のように定められています。
第百五十条 次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分の審判事件(別表第二の一の項の事項についての審判事件をいう。次条第一号において同じ。) 夫又は妻の住所地
協力請求のポイント①開示が相当か
請求が認められるかどうか、ポイントは2つあります。
「夫婦の協力義務」とは抽象的な表現です。「●月●日●時から●時までの行動を明らかにせよ」といった行動履歴の開示請求が、協力義務の1つとして認められるかがカギを握ります。
協力請求のポイント②プライバシー権
もう1つは個人のプライバシーです。配偶者のプライバシー権を犠牲にしても、行動履歴の開示が認められるかが焦点です。
夫婦間においても相互にプライバシー権は一定の範囲で尊重されます。
「協力義務」のひとつとして情報開示を請求する必要性と、プライバシー権を制限してしまう程度を比較しての判断となるでしょう。
夫婦の協力義務にもとづく行動履歴の開示請求をしたケースは、私たちが知る限り、過去に例がありません。
それでも「配偶者の不審な行動を明らかにしたい」という悩みを法的に解決する手段としては、あり得るのではないかと考えます。
夫婦の悩み、ご相談ください
当事務所では2015年ごろから「配偶者に対する協力請求」の可能性について、専門チームを設けて研究しています。
離婚を決意された当事者からの依頼のみならず、「離婚すべきかどうか悩んでいる」「夫婦関係がギクシャクし始めた」といった方々にも弁護士が寄りそい、サポートできると考えています。
夫婦のかたちは千差万別です。「円満な夫婦」がもちろん理想ですが、ずっと「円満」とはいかず、険悪になるパターンもあるでしょう。
あるべき姿をルールに則って互いが共有し、リセットすれば「円満」に戻れるはずです。私たちは法的な立場から、夫婦の人生を支えていけたらと考えています。
「夫婦間の協力義務」「配偶者に対する協力請求」について、この問題のエキスパートであり、個別のケースに対応している当事務所にぜひ相談ください。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
【本記事の監修】
弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋(代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。