離婚コラム
離婚したくない
協力請求
夫婦の協力義務とは?
公開日:2019.10.18
夫婦が家庭裁判所を利用する場合、多くの人が「離婚する」ことを前提に利用する傾向にあります。しかし、家庭裁判所は、必ずしも「離婚する」ことを前提にしているわけではありません。家族間の何らかの揉め事を調停という話し合いの場を通じて調整し、または審判(あるいは判決)という形式にて、裁く所なのです。
例えば、夫婦間には同居義務があります(民法752条)。同居義務に違反して一方的に別居を強行した配偶者(夫または妻)に対しては、家庭裁判所に同居調停や同居審判を申し立て、「家に戻ってきなさい。」と請求することができます。配偶者が出て行ってすぐの場合は、こちらに暴力や不貞行為といった原因がない限り、同居審判は認められやすいところです。
また、民法752条には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」とあります。
つまり、民法では、① 同居義務、② 協力義務、③ 扶助義務を明記しているのです。注釈民法という民法の基本的な解説書でも、上記3つは夫婦間の基本的な義務であり、守操義務(不倫しない義務)とあわせて裁判規範性を有するなどと解説されています。
ところが、①の同居義務を認めた審判例や、③の扶助義務を認めた審判例はたくさん見つかるものの、②の協力義務を認めた審判例はなかなか見つけられません。前例がないと、民法学者の間でも議論が深まりませんし、我々弁護士も知識として知らない人が圧倒的に多くなってしまうため、誰も「協力審判」なる手続きを思いつかず、日本の家庭裁判所でもまったく申し立てられていないというのが実情です。
「協力審判」においては、「相手方は申立人に協力せよ。」などと抽象的に命じることも考えられますが、これだと実効性がありませんので、裁判所には様々なバリエーションをもって「協力義務」を具体化することを期待したいところです(家事事件手続法154条2項1号参照)。
さいごに
ご依頼者様の情熱と、我々弁護士の手厚いサポートと、勇気ある裁判官によって、
「妻は夫に対し、妻名義の全ての通帳の残高及び婚姻後の取引明細を開示せよ。」
「夫は妻に対し、令和●年▼月■日午後10時頃にラブホテル××において会っていた女性の氏名、住所、電話番号を開示せよ。」
円満な夫婦を前提とすれば、
「妻は夫が帰ってきたらお帰りの挨拶をせよ。」
「夫は毎週日曜日の午前中に家の全ての部屋の掃除をせよ。」
といった画期的審判が出る日が来るかもしれません。
我々は、あまり前例のない「協力義務」を求めるというご要望にも、全力で取り組みます。気になる方は、ぜひ当事務所へお問い合わせください。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
【本記事の監修】
弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋(代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。