離婚コラム
協力請求
協力請求・協力審判の弱点 -強制執行できない!?-
公開日:2020.12.04
前回まで、いろいろな可能性を秘めた、夫婦間の協力義務、配偶者に対する協力請求を解説してきましたが、実は実務上、あまり活用されない理由・弱点があると思われます。
それは、一般的に、協力義務に対しては強制執行(直接強制も間接強制も)できないと解説されていることです。
同居審判の事案ですが、強制執行できないとした古い時代の判例もあります。
何らかの形で「夫婦間の協力義務」が定められたとしても、これを守るかどうかは基本的に配偶者の自由意思に委ねられるべきであり、裁判所が強制力をもって、配偶者の自由意思を踏みにじり、協力義務を尽くさせるわけにはいかない、と考えるのです。
しかしながら、協力義務があるのにこれを破った者に対して、裁判所が何もできない・言えないという解釈には、当事務所としては反対です。
協力させる必要がないなら協力義務を命じなければよいわけで、命じておきながら、守るかどうかは当事者まかせというのは、「法は家庭に入らず」という古い時代の価値観に縛られすぎているように思います。
また、少なくとも、違反状態に対して一定額を支払わせる間接強制については、認めても、何らおかしくないのではないでしょうか。
この点は、この論点に関する先例が見当たらないので、どのような結論になるかはわかりませんが、当事務所としては「協力義務であれ、同居義務であれ、何らかの強制執行が認められるべき」という立場で、今後も活動し続けたいと考えています。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
【本記事の監修】
弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋(代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。