離婚コラム
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協力請求の活用例② -配偶者に対する情報開示請求-
公開日:2020.12.04
配偶者に対する情報開示請求について、お話ししたいと思います。
まず、「情報」というと、例えばどんなことをいうのでしょうか。以下で検討してみましょう。
配偶者の「お金」に関する情報
- 配偶者の実際の給料や賞与額を知りたい
- 配偶者が、どこにどれだけの預金をしているのか
- 配偶者が、どこにどれだけの借金をしているのか
など、「夫婦間の収支状況や資産状況について知りたい」というニーズは多くの夫婦で存在します。
夫婦が円満で、破綻状態にない限り、これらの情報は一般的に夫婦間において相互に開示されてしかるべき情報です。開示を求められたときは、原則として開示が必要です。拒絶する場合は、拒絶を正当化する理由を説明できなければならないでしょう。
配偶者の「プライベート」に関する情報
- 配偶者が最近頻繁に通話アプリでやり取りしているアドレスについて、誰なのか、どんなやり取りをしているのか
- 配偶者が深夜に帰宅した場合、職場を退勤してから家に帰りつくまでに、どのような場所に出入りし、誰と一緒に過ごしていたのか
など、「配偶者のプライベートでの言動について、知りたい」というニーズもあるでしょう。
夫婦間の協力義務にもとづく情報開示請求は、このようなニーズを叶える余地があります。
もちろん、夫婦間においても相互にプライバシー権は一定の範囲で尊重されるべきなので、夫婦間の協力義務の一部である情報開示請求を行う必要性と、配偶者のプライバシー権を制限してしまう程度とを比較したうえでの判断となるでしょう。しかし、配偶者の側にやましい事情がある場合には、この請求も認められやすくなるように思います。
さいごに
実際にこのような請求が夫婦間で横行し、裁判所で争われることが普通な世の中は、今の私たちの感覚からすると末恐ろしい気もしますが、ニーズがある以上、世の中はニーズを叶える方向で進んでいくものです。
夫婦である以上は、基本的に隠しごとのない状態でありたいものですね。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
【本記事の監修】
弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋(代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。